プロジェクト概要

2018年7月、執拗にふり続けた雨は、西日本のあらゆる地域に甚大な被害をもたらした。「とにかく急いで来て欲しい」と災害復旧の要請を受けた男たちが現場で直面したのは、これまで見たこともない光景だった。

EPISODE 01

前代未聞の出来事に
膨れあがっていく不安。

これまで岡山県は、自然災害の少ない地域だった。だからこそ、あの日の衝撃は深く心に刻まれている。2018年7月。西日本各地を襲った豪雨は、世界を一変させた。山陽環境開発が拠点を構える新見市も河川の水が溢れた。だが、取引先の多い倉敷市水島地区はさらに被害が甚大だった。あらゆる道路が通行止めになり、業務も混乱した。そんな中、1本の連絡が入る。

「とにかく急いで来て欲しい」。高速道路の維持管理会社からの要請だった。山陽道が土砂で埋もれ、復旧作業に人手を必要としていた。連絡を受け、社内に漠然とした緊張が走る。これまで災害復旧の出動の経験はない。たちまち、車両2台、高圧吸引車2台を用意し、作業経験に長けた精鋭4名が緊急招集された。そして出発の日の朝、専務が早起きをしておにぎりを握っていた。大きなおにぎりを4人に手渡し、「怪我のないように」と祈るように背中を押した。

EPISODE 02

ここは日本なのか。
思わず目を疑う光景。

向かったのは東広島市。途中のサービスエリアでは立ち往生した車で溢れ、全てが満車。その異様な光景に一抹の不安を覚えた。道路というインフラが機能しないことで、ガソリンスタンドも在庫が尽き、給油もできなかった。なんとか現場に到着した4人だったが、そこに広がる風景に、呆然と立ち尽くすしかなかった。高速道路に覆い被さった大量の茶色い土。根こそぎ倒れた木や無数の石が散らばり、背丈を越す土砂のあともあった。

人間の力を遥かに超えた自然の脅威。「いつ帰れるか分からんぞ」4人は身震いする気持ちを押さえて、土砂の撤去作業に取り掛かった。木や石は手作業で避け、とにかくできる範囲で土砂を吸い、一時保管場所まで運搬。その繰り返しが果てしなく続く。土砂で道路は見えないが、路肩の水路はおそらく蓋が取れているだろう。そこに足を取られないように皆で声を掛け合った。「怪我をして帰ってはいけない」専務の声が4人の頭の中にリフレインしていた。

EPISODE 03

終わりの見えない作業に埃まみれの朝日が輝いた。

4人のために会社はホテルを取っていたが、現場で言われたのは「いつでも来られるように待機して欲しい」。夜中まで作業した後は、サービスエリアに行き、車内で1〜2時間の仮眠を取った。山陽道の通行止めは、社会に与える影響も大きい。できるだけ早く作業を終わらせなくてはいけない。1日、2日とあっという間に過ぎ、ようやく3日目、開通の目処がたった。お世辞にも綺麗になったとは言えないが、車両が通行できるまでには復旧することができた。
土砂の残骸が砂ぼこりとなって、高速道路に舞っている。「二度とこんなことはあってはいけない」。作業が終わった安堵感の中に、かすかな痛みがあった。それでも「今後、要請があればいつでも行く」そんな使命感に似た気持ちも芽生えていた。翌年、新見市は集中豪雨に襲われる。中国自動車で崩落があり、市街地も泥水で溢れた。その復旧作業の最前線で、4人は迅速に動いていた。今度は地元のために。その足はもう、立ち尽くすことはなかった。

PROJECT 02

未来に希望をつなぐ
環境学習プロジェクト

詳しく見る